■ 目 次
■
● 免震と非免震(「耐震」)について ●
固有周期型・摩擦型免震 ● すべり系・転がり系免震 ●
「免震の選択」チェックポイント ● 固有周期型免震問題 1 (長周期地震対応 線形
⇒ 非線形) ● 固有周期型免震問題 2 (地震後、元の位置に戻らない) ●
固有周期型免震問題 3 (地震後・強風時・強風後の揺れ) ● 固有周期型免震問題 4 (「まとめ」と「風揺れ問題」) ●
風揺れ問題 ■
免 震 (理論編) ■ ※このページの全てのグラフのスケールは合わせています。また、グラフの色も共通で、灰色の波が地震入力加速度、朱色の波が耐震の2階の応答加速度、黄色の波が制震の2階の応答加速度、青色が免震の2階の応答加速度です。
「免震」と「非免震」では、建築基準法の「耐震基準」の概念が違います。 簡単に言ってしまえば、
★「非免震」(いわゆる「耐震」)
稀な地震(震度5弱程度※2)まで無損傷※1 極めて稀な地震(震度6弱程度※2)まで倒壊崩壊しない
★「免震」
極めて稀な地震(震度6弱程度※2)まで無損傷※1
震度5弱程度を超える地震から、構造躯体等の「損傷」が始まっても良いかどうかです(地震ごとに建物が破壊して、資産価値が落ちます)。
震度6弱程度まで「無損傷」にしたいかどうかです。
ここでいう「震度6弱程度まで無損傷」も免震装置によって性能が違います。もっと性能をあげている場合があります。
IAU免震では、2400gal(震度7)の実大振動実験の結果でも、構造躯体等が「無損傷」でした。しかし、地震波の特性によって免震性能は変わります。すべての震度7に対して、無損傷というわけではありません。
さらに、 構造躯体等を「無損傷」に押さえるためには、免震性能を、建物応答として(「耐震基準」通りの建物の場合)震度4〜5弱程度以内に抑えないといけなくなります。
その結果、 建物の仕上材の破壊、また建物内の家具等の転倒も、限りなく小さくなります。 それによる損害、また下敷きになって大怪我、死亡する場合もありますので、それを防げます。
建物内の地震時の恐怖感もまったく違います。
ただ、震度4〜5弱程度以内に抑えられない「免震」も多いようです。
その場合、例えば、建物の耐震性能を「耐震基準」の1.5倍、耐震等級3(C0=0.3)にまで上げている場合もあるようです。 「免震」なのに、耐震性能を上げる必要がある「免震」もあるということです。それは実は、免震性能が悪いのです。
免震選択時にこの点は「要注意」です。
IAU免震の場合では、逆に、耐震等級1(C0=0.2)の6〜7割程度(C0=0.13〜14)まで落とせます。それは、免震性能が良いからです。
※1 建築物の構造耐力上主要な部分に損傷が生じない。 2007 年版国土交通省住宅局建築指導課監修『建築物の構造関係技術基準解説書』53
頁 免震の無損傷規定は、平成12年建設省告示第2009号。
※2 1996年改正の新震度階、建物への入力地震動国交省系の雑誌「建築技術」の
詳細は ・ 「建築技術」2010年1月号特別記事「震度6弱以上の地震発生確率の驚異的上昇とその建物被害」
【PDF3MB】 ・ 「建築技術」2010年4月号特別記事「大きな節目の年、耐震基準の引き上げへ」
【PDF4MB】 ・ 「建築技術」2011年2月号連載第2回「『耐震基準』改定は喫緊の課題」
【PDF3MB】 ご参照下さい。 但し、気象庁の1996年改正の新震度階の問題は、 ・ 「建築技術」2011年3月号連載第3回「『豊かな時代』にふさわしい『耐震基準』のために」
【PDF5MB】 計測震度計算におけるローカットフィルターの掛け方がおかしいので、1.6秒以上周期成分をもつ地震波は、震度階が下がってきます。同じ加速度でも、大きい速度、大きい変位の地震ほど震度階が下がってくる問題があります。
もう少し詳しく、建築基準法の「耐震基準」(「免震」ではなく)について、大略説明をします。
「標準せん断力係数C0」は、耐震設計で最重要概念です。
1.C0=0.2
⇒ 許容応力度計算 ⇒ 無損傷 2.C0=1.0 ⇒ 保有水平耐力計算 ⇒ 倒壊崩壊しない
というものです(全ての建物がこの計算をするわけでなく、規模等によって免除されていきます)。
標準せん断力係数C0は、建物応答値です。これを地震入力の加速度、震度に直すと、
1.C0=0.2
⇒ 建物応答 200gal ⇒ 地震入力 80〜100gal=震度5弱程度=稀な地震 ⇒ 無損傷 2.C0=1.0 ⇒ 建物応答1000gal
⇒ 地震入力300〜400gal=震度6弱程度=極めて稀な地震 ⇒ 倒壊崩壊しない
と言うことです(地震の建物応答(増幅)倍率は2.5倍程度です)。
整理すると、
1.地震入力 80〜100gal =震度5弱程度=稀な地震 ⇒
無損傷 2.地震入力300〜400gal =震度6弱程度=極めて稀な地震 ⇒ 倒壊崩壊しない
「免震」は、これとは違い 1.地震入力
80〜100gal =震度5弱程度=稀な地震 ⇒ 無損傷 2.地震入力300〜400gal※=震度6弱程度=極めて稀な地震 ⇒ 無損傷
と言うことになっています。
整理すると、
★「非免震」(いわゆる「耐震」) 1.地震入力
80〜100gal =震度5弱程度=稀な地震 ⇒ 無損傷 2.地震入力300〜400gal =震度6弱程度=極めて稀な地震 ⇒ 倒壊崩壊しない
★「免震」 1.地震入力 80〜100gal =震度5弱程度=稀な地震
⇒ 無損傷 2.地震入力300〜400gal※=震度6弱程度=極めて稀な地震 ⇒ 無損傷
と言うことです。
すなわち、 「非免震」で「倒壊崩壊の恐れ」の出てくるところまで、 「免震」では、構造躯体等で「無損傷」を要求されていると言うことです。
全く水準が違いのです。
※ 旧38条「免震」、告示「免震」の違いについて
「免震」の「極めて稀な地震」に関しては、平成12年建設省告示第2009号での地震動は、これよりかなり大きい。 そのため、1998年建築基準法改正前の旧38条認定に基づく「免震」と、2000年の告示第2009号の「免震」では、実は性能がかなり違います。
旧38条「免震」に比べて、告示(第2009号)「免震」の方が、かなり大きい地震動まで許容しています。 これは、重要です。IAU免震は、告示「免震」ですから、大きい地震動まで許容しています。
しかし、メーカーによっては、まだ旧38条「免震」が販売されています。注意する必要があります。
簡単に言って、
「非免震」と「免震」では、 「損傷限界(構造耐力上主要な部分に損傷が生じない限界)」で、5倍性能が違います。
耐震は
1.C0=0.2 ⇒ 無損傷 免震は耐震の 2.C0=1.0 ⇒ 無損傷 まで要求されているからです。
そのため、免震性能によって、
C0=1.0 ⇒ C0=0.2 まで落とさないと、 平成12年建設省告示第2009号(「免震告示」) を満たせられません。
最低でも、 「耐震(非免震)」の1/5まで、応答値を下げる性能が要求されています。
これは最低です。 これを満たせられないために、
C0=1.0 ⇒ C0=0.3 と、標準せん断力係数を上げる必要のある免震もあります。 上記の
>例えば、建物の耐震性能を「耐震基準」の1.5倍、耐震等級3(C0=0.3)にまで上げている場合もあるようです。
これは、「免震」にして、さらに建物耐力を1.5倍上げる(壁量を増やす)必要があるので、「免震告示」が、恐らく予想してなかったものだと思います。
しかし、そういう「免震」が意外と多いので要注意です。「免震」性能が悪いということです。 建物耐力を上げる(壁量を増やす)必要がある免震は、「免震」性能が悪いということです。
こうなってしまっている理由は、 「免震告示」が 「極めて稀な地震(震度6弱程度)」まで「無損傷」 を要求しているからです。
結局、「免震告示」の法理念は、 国民の財産を、「極めて稀な地震」でも「無損傷」にして守りたいと言うことです。
「耐震(非免震)」が、国民の生命だけを「極めて稀な地震」から守りたいと言うことに対して、
「免震」は、国民の財産さえも「極めて稀な地震」から「無損傷」にして守りたいと言うことです。
「耐震」⇒ 国民の生命だけを守りたい。
「免震」⇒ 国民の生命と財産の両方を守りたい。
と言うことです。
「国民の生命と財産の両方を守りたい」という時代にかわってきたということです。
20世紀まで、「耐震の時代」⇒ 国民の生命だけを守りたい。
21世紀以降、「免震の時代」⇒ 国民の生命と財産の両方を守りたい。
でしょうか。
「免震」なのに、耐震性能を上げる必要がある「免震」もあるということです。それは実は、免震性能が悪いのです。
免震選択時にこの点は「要注意」です。 について、 簡単に説明します。
★ゴム系・バネ系の免震の場合は、固有周期4秒をめざしていますので、それが目安です。
固有周期の短いものが悪いのです。 ところが、木造・鉄骨等の戸建住宅では、軽いために積層ゴムだけではほとんど免震しません。 T=2π√(M/K)
という固有周期を求める式があります。 この式の通り、木造・鉄骨等の戸建住宅は軽い(M:質量)ので、固有周期(T)が伸びず、すなわち、免震性能が悪い、という問題がありました。
そこで下記の摩擦系(すべり系・転がり系)免震を併用します。
ただ、摩擦系(すべり系・転がり系)免震で、ゴム系・バネ系復元材を併用すると、固有周期をもって、長周期地震に免震しないどころか共振を起します。それが一番問題です。
長周期地震を考えると、摩擦系(すべり系・転がり系)免震でも、ゴム系・バネ系復元材を併用しないのがよいのです。また、球面皿のすべり系・転がり系免震支承も、固有周期をもって、長周期地震に免震しないどころか共振を起します。
★摩擦系(すべり系・転がり系)の免震の場合では、摩擦係数です。摩擦係数が小さい方が「免震性能」が良いのです。 ・すべり系: 1/10(0.5/10〜)
・転がり系:1/100(2/1000〜2/100程度) 「すべり系免震」とは、鉄板・ステンレス板の上を、低摩擦材ですべらせる、スライドさせる方式。
「転がり系免震」とは、鉄板・ステンレス板の上を、ボール・ローラー等で転がせる方式。 「転がり系免震」に比べて「すべり系免震」の方が、10倍程度、摩擦係数は悪いのです。復元材・ダンパー等を使用しますので、このまま、ダイレクトに「免震性能」に影響しませんが、この10倍という値の影響は大きいです。
また、「免震性能」を含んだ「免震」全般について言えば、 (社)大阪府建築士会の会報誌「建築人」5月号 (「戸建住宅の免震について」)
をご参照下さい。 「免震の選択」のチェックポイントは
1.免震性能が良い。
2.強風時に揺れない。 3.長周期地震に共振しない。 4.地震後に建物が元に位置に戻る。⇒ 戻らないと、大震災後、建物を戻すために大変なことになる。
5.不同沈下に強い。 ⇒ 不同沈下で基礎が傾くと、建物がずれる免震が多い。
です。
ここで加速度と震度の話をします。 0.6秒周期でみると現行の気象庁震度階は、
0.8gal以上 震度1
2.5gal以上 震度2 8gal以上 震度3 25gal以上 震度4 80gal以上 震度5弱 140gal以上 震度5強
250gal以上 震度6弱 450gal以上 震度6強 800gal以上 震度7
となります。
ここで、「免震告示」の規定での 地震入力300〜400gal=震度6弱程度=極めて稀な地震
⇒ 無損傷 これが難しい。 「非免震」(いわゆる「耐震」)では、 地震入力 80〜100gal=震度5弱程度=稀な地震 ⇒ 無損傷
ですから、 これを上部構造として使用するので 地震入力を 目安として80〜100gal程度に抑えられるか、 建物ごとに計算して建物応答値(地震の建物応答(増幅)倍率は2.5倍程度です)として、
C0=0.2 ⇒ 建物応答 200gal ⇒ 無損傷 200gal程度に抑えられるか、 です。
ここで、復元装置(バネ・ゴム)+ダンパーをもたない、すべり系転がり系の摩擦係数型装置を考えると、
建物入力加速度≒1000×摩擦係数(gal) です。
1.すべり系免震:摩擦係数= 1/10(0.5/10〜)
2.転がり系免震:摩擦係数=1/100(2/1000〜2/100程度)
これは動摩擦係数ですので、静止摩擦係数は一般的に約2倍(免震が始まる段階)。
1.すべり系免震:摩擦係数= 2/10 2.転がり系免震:摩擦係数=2/100 から
1.すべり系免震の建物入力加速度≒200gal
2.転がり系免震の建物入力加速度≒ 20gal となります。
これから分かりますように、 地震入力を 80〜100galに抑えられるのは、「転がり系免震」だけとなります。
すべり系免震の摩擦係数を 0.5/10としても100galでギリギリです(摩擦係数=0.5/10をめざさないといけない理由はここにあります)。 それに、経年変化、復元装置+ダンパーを与えると、免震性能が悪くなるので、無理な可能性も出てくる。但し応答として免震はスウェイ運動に近い場合もあるが、しかし値に全く余裕がない。
そこで、上部構造の耐震性能上げて、C0=0.3(耐震等級3)等にして対応することが出てくる、ということです。
ここで、分かりますように、復元装置(バネ・ゴム)+ダンパーをもたない状態で、
1.すべり系免震の建物入力加速度≒200gal ⇒震度5強(100galとしても震度5弱)
2.転がり系免震の建物入力加速度≒ 20gal ⇒震度3 (10galとしても震度3)
の差はあまりに大きい。
復元装置(バネ・ゴム)+ダンパー※を入れるともっと上がる。 「すべり系免震」が、「告示免震」では「極めて稀な地震で無損傷」の規定で、非常に苦しむ原因です。
※必ずしも下がるとは限らない。
「免震の選択」のチェックポイントについて これからの説明のために、並べ変えました。
1.免震性能が良い。
2.長周期地震に共振しない。 3.地震後に建物が元に位置に戻る。⇒ 戻らないと、大震災後、建物を戻すために大変なことになる。 4.不同沈下に強い。
⇒ 不同沈下で基礎が傾くと、建物がずれる免震が多い。 5.強風時に揺れない。
まず、1と2について説明します。
1について、すべり系・転がり系免震で説明済みです。 2については、今回の大震災では、関東地方は長い時間の長周期地震で大変でした。
まず、1と2とによる免震分類です。
以下、軽量の戸建免震に限っての話で説明します。、 積層ゴム単独では、軽量戸建は免震しないので、以下の2タイプになります。
低摩擦係数材(転がり系免震・すべり系免震)を利用するということです。
1.転がり系免震:摩擦係数=1/100(2/1000〜2/100程度)
2.すべり系免震:摩擦係数= 1/10(0.5/10〜)
・「転がり系免震」とは、鋼板・ステンレス板の上を、ボール・ローラー等で転がせる方式。
・「すべり系免震」とは、鋼板・ステンレス板の上を、低摩擦材ですべらせる、スライドさせる方式。
ここで、1.2.タイプごとに、長周期地震対応で2タイプの分かれる。
A.非固有周期型免震 B.固有周期型免震 :ゴム型 T=2π√(M/K)、球面型
T=2π√(R/G)
以上から、分類すると、4タイプの分かれます。
1.転がり系免震(免震性能良い)
1A:転がり系非固有周期型免震 長周期地震に共振しない 1B:転がり系固有周期型免震 長周期地震に共振
2.すべり系免震(免震性能悪い)
2A:すべり系非固有周期型免震 長周期地震に共振しない 2B:すべり系固有周期型免震 長周期地震に共振
現状の(合法の)免震は、この分類で整理できます(エア断震も単に摩擦係数だけの話です)。
ただ、非固有周期型免震は、まだほとんどありませんが、 IAU免震は、非固有周期型の免震です。
IAU免震は、1Aで、免震性能良く、長周期地震に共振しない
ということです。
| ● 固有周期型免震問題 1 (長周期地震対応 線形
⇒ 非線形) | 目次へ |
長周期地震対応で2タイプの分かれる。
A.非固有周期型免震
B.固有周期型免震
について、 B.「固有周期型免震」は、
この理論の要は、「大きくゆっくり揺らして地震力を低減」という考え方です。 しかし、本来の免震は、大きくゆっくり揺らすより、「建物自体が揺れない」ことが理想です。
A.「非固有周期型免震」 は、それをめざしたものともいえます。
数学の分類に基づくと、
非線形⇒非固有周期型免震=非共振系免震
線形 ⇒固有周期型免震 =共振系免震
と分けても良いかもしれません。
IAU免震の考え方は、「非固有周期型免震」であり、「地震力絶縁型」といっても良いでしょう。地面が揺れても止まっている「不動点状態」にするというのが基本的な考え方です。
固有周期型免震は、「柳のように揺らして地震力を軽減」の超高層建築理論の延長上です。 この理論では、地震周期(卓越周期)よりも「免震」の周期を最低でも2〜3倍程度に伸ばしたいのですが、想定の地震周期よりも長い周期の地震がくると免震性能が落ち、「免震」の周期に近い地震が来ると共振します。
現状の「免震」は、固有周期が2〜4秒のものが多いですが、地震周期(卓越周期)が2〜4秒だと、免震しないどころか共振を起します。共振を起すと「耐震(非免震)」より危険なことになります。これが、長周期地震の問題です。
(超高層理論の当初、「長周期地震」などないと勝手に思い、超高層理論、免震理論を作り上げてきたところがあります。) それも長周期地震が、近年観測される頻度が多くなりました(地震活動期に入ったからでしょう)。
今回の東日本大震災でも観測され、関東地方では継続時間の非常に長い「長周期地震」に襲われ、非常に大変でした。 「固有周期型免震」では、大きく揺れて、地震力が低減していないどころか(ダンパーで抑制していますが)増幅する場合もあり、非常に大きく揺れ、被害がでる場合もありました。
「免震」の次の段階を考えると、
A.非線形型免震=非固有周期型免震=非共振系免震
に切り替えないといけないということです。 さらに、この「非共振系免震」をつければ、超高層建物も長周期地震で共振しないということです。
この免震理論では、現状の「免震」と「超高層建物」の長周期地震での共振問題を同時に解決できるということです。 「超高層建物」も大きく揺れない「超高層建物」に変わる。地震時に揺れない「超高層建物」に変わるということです。
| ● 固有周期型免震問題 2 (地震後、元の位置に戻らない) | 目次へ |
3.地震後に建物が元に位置に戻る。⇒ 戻らないと、大震災後、建物を戻すために大変なことになる。 について、 「固有周期型免震」は、地震後に元の位置にも戻りにくい。
少し詳しく説明します。
「免震の選択」チェックポイントの B.固有周期型免震 の固有周期(T)を求める式があります。
T=2π√(M/K)
K:バネ定数(復元力に繋がる係数) M:質量
免震性能を上げるためには、できるだけ固有周期(T)を伸ばしたい(周期を大きくすればするほど免震性能が上がります。T=∞が理想です)。
そのためには、 ・バネ定数(K)小さくするか、 ・質量(M)を大きくするか(建物の重さを大きくするか)、 となります。 ただ、木造・鉄骨等の戸建住宅は軽いので、質量(M)を大きく出来ません。大きくすること自体が不経済です。そこで、バネ定数(K)を小さくします。
しかし、下式によって、バネ定数(K)を小さくすると、復元力(F)が小さくなります。
F=K・X (バネばかりの式、フックの法則です)
その結果、建物が元の位置に戻りにくくなるということです。 さらに加えて、 X(元の位置からの距離)が小さいほど、元の位置に近づけば近づくほど、戻りにくくなるということです。
その上、邪魔をするのが、「摩擦係数」です。 摩擦係数の大きい「すべり系免震」の方が戻りにくくなるということです。 また、ダンパー(減衰材)も元の位置に戻ることの邪魔をします。
(「すべり系免震支承」も「減衰材」の一種です。「転がり系免震支承」は「減衰材」としての能力はきわめて小さいため「ダンパー」を別に設けますので、結局、戻りにくくします。)
地震後に建物が元の位置に戻らないのでは、これは次に襲ってくる余震のためにも問題です。 また、地震後、建物を戻すために大変なことになります。
普及すれば普及するだけ、建物を戻すために大変なことになります。 今回の東日本大震災時に、かりに、関東以北の建物全てが、「固有周期型免震建物」(固有周期が長く、減衰抵抗が大きい場合は特に※)であった場合、建物を戻すために大変なことになっていたと思います。
このように、 「固有周期型免震」は、固有周期型免震問題1記載の「長周期地震」と「地震後に元の位置にも戻りにくい」という、かなり大きな問題を抱えています。
この2つの問題から、 A.非線形型免震=非固有周期型免震=非共振系免震 に切り替えないといけないということです。
ただ、非線形型免震=非固有周期型免震=非共振系免震
であれば、「原点復帰能力」があるとは限りません。 そのため、IAU免震では、 非線形型免震=非固有周期型免震=非共振系免震であっても、さらに「原点復帰能力」を高めています(免震支承、ダンパー、風揺れ固定装置の、個々の機構によって、より高い「原点復帰能力」を実現しています)。
※「固有周期が長く、減衰抵抗が大きい場合は特に」について 固有周期が短い場合には、減衰抵抗を大きくしておかないと、比較的周期の短い「長周期地震」でも共振します。
固有周期が長い場合には、それ自体で戻りにくい上に、「長周期地震」対策で「減衰抵抗」を上げさせられていると、ほとんど戻らなくなります。 また、「地震波は原点復帰する」と思われていた時期があり、復元力を極端に小さくして長周期化を図った免震は、それに期待していたところがあると思います。
しかし、実は、地面は地震後に原点復帰してくれないことが分かってきています。 今回の東日本大震災での地殻変動を例に取れば、地震時に地面(敷地)は、GPS観測の結果から、数十cmまたはそれ以上のずれ(東日本大震災では牡鹿観測点で約5.3mの水平移動を観測)を起してしまい、敷地が移動して、元の位置に戻らない状態になるわけです。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11apr_sanriku-oki3/index.htm そして、その影響を「原点復帰の能力を小さくした免震」は、大きく受け、建物は元の位置に戻らなくなるわけです。
また地盤の傾斜の問題も大きいでしょう。その傾斜の方向に、地震後、建物がずれてしまうことにもなります。 それが、
「免震の選択」チェックポイントの 4.不同沈下に強い。 ⇒ 不同沈下で基礎が傾くと、建物がずれる免震が多い。 での話です。
| ● 固有周期型免震問題 3 (地震後・強風時・強風後の揺れ) | 目次へ |
5.強風時に揺れない。 について、 「固有周期型免震」のこの関連問題について、
E.地震揺れ
E1.地震中に大きく揺れる E2.地震後も揺れ続ける
W.強風揺れ
W1.強風時に揺れる W2.強風後も揺れ続ける
の問題がありますので、全体を整理します。
E1.地震中に大きく揺れる は、固有周期型免震問題1に書きましたが、もう一度整理します。
F=K・X (フックの法則です) F:復元力 K:バネ定数 X:原点からの距離 に由来しています。 ここで、免震性能を上げるためには、できるだけ固有周期(T)を伸ばすのため、バネ定数(K)小さくする。
Kが小さいために、大きな地震力に対して、X(原点からの距離)が大きくなる。 これが地震中に大きく揺れる理由です。 「大きくゆっくり揺らして地震力を低減」
「柳のように揺らして地震力を軽減」 という考え方になります。 IAU免震の考え方の、「非固有周期型免震」「地震力絶縁型」「不動点状態」にするという基本的な考え方とは全く違います。
E2.地震後も揺れ続ける また、ゴム・バネだけでは、減衰しない。揺れが止まらない。 そこで「ダンパー(減衰材)」を入れますが、これも、速度比例型ダンパーが多いため、速度が小さいと減衰抵抗が小さくなる(ゴムに減衰性能を入れている場合かある)。
そのため、揺れが小さくなる(速度が小さくなる)と、ダンパーも効かなくなる。そのため、揺れがなかなか止まらなくなります。 これが、地震後も揺れ続ける原因です。
W1.強風時に揺れる これも F=K・X に由来しています。 免震性能を上げるためには、できるだけ固有周期(T)を伸ばすのため、バネ定数(K)小さくしている。
Kが小さいために、風に対する抵抗力がなく、大きな風力に対して、X(原点からの距離)が大きくなる。 これが強風時に大きく揺れる理由です。
W2.強風後も揺れ続ける
ゴム・バネだけでは、減衰しない。揺れが止まらない。 そこで「ダンパー(減衰材)」を入れますが、これも、速度比例型ダンパーが多いため、速度が小さいと減衰抵抗が小さくなる(ゴムに減衰性能を入れている場合かある)。
そのため、揺れが小さくなる(速度が小さくなる)と、ダンパーも効かなくなる。そのため、揺れがなかなか止まらなくなります。 これが、強風後も揺れ続ける原因です。地震後の揺れ続けと同じ話です。
これらの問題のうち、 E1.地震中、E2.地震後、W2.強風後の揺れ問題解消には、
A.非線形型免震=非固有周期型免震=非共振系免震
への切り替えが有効な場合がありますが、 W1.強風時に揺れる
の解決は別です。
そこで、IAU免震では、 この「強風時揺れ」問題解決のために、「風揺れ固定装置」を別に設けるしかないという結論に達し、「風揺れ固定装置」を開発したのでした。
| ● 固有周期型免震問題 4 (「まとめ」と「風揺れ問題」) | 目次へ |
「免震の選択」のチェックポイントは
1.免震性能が良い。
2.強風時に揺れない。 3.長周期地震に共振しない。 4.地震後に建物が元に位置に戻る。 5.不同沈下に強い。
は、現状の多くの「免震」=固有周期型免震(ゴム・バネ復元装置系免震)
の問題の裏返しだったのです。 以下、固有周期型免震の問題を再整理します。
【固有周期型免震の問題】 1.免震性能、木造・鉄骨造の軽量建物では、積層ゴム単独では免震しない。⇒ 固有周期型・摩擦型免震
1B:転がり系固有周期型免震=免震性能良い。⇒ すべり系・転がり系免震、
「免震の選択」チェックポイント 2B:すべり系固有周期型免震=免震性能悪い。⇒ すべり系・転がり系免震、
「免震の選択」チェックポイント 2.長周期地震に共振する。⇒ 固有周期型免震問題1
3.地震後に建物が元に位置に戻りにくい。⇒ 固有周期型免震問題3
4.不同沈下に弱い。 ⇒ 固有周期型免震問題3
5.強風時に揺れる。 ⇒ 固有周期型免震問題4
地震後も揺れ続ける。⇒ 固有周期型免震問題4
強風後も揺れ続ける。⇒ 固有周期型免震問題4
しかし、 5.強風時に揺れる(軽量建物・高層建物の場合でも揺れる) に関しては A.非固有周期型免震 B.固有周期型免震
のどちらでも、 解決しにくいということです(非固有周期型免震は「共振問題」の解決です)。
このままでは、「免震」が普及すると、日本の建物は強風に弱い状態になります。
それを解決せざるを得なかったのです。 その解決が、IAUの「風揺れ固定装置」でした。
これはビル免震にもつけます。IAU免震ビルは強風でも揺れないということです。 しかし、ビルよりも、木造・鉄骨造等の戸建住宅が、軽量ゆえに、大変だったということです。
ここで木造・鉄骨造等の軽量の戸建住宅の「強風対策」について説明します。
1.免震性能、木造・鉄骨造の軽量建物では、積層ゴム単独では免震しない。⇒ 固有周期型・摩擦型免震
1:転がり系固有周期型免震=免震性能良い。⇒ すべり系・転がり系免震、
「免震の選択」チェックポイント 2:すべり系固有周期型免震=免震性能悪い。⇒ すべり系・転がり系免震、
「免震の選択」チェックポイント
からスタートしていますが、 結局、木造・鉄骨造等の戸建住宅は、より高い免震性能にするために
1.転がり系免震:摩擦係数=1/100(2/1000〜2/100程度)
2.すべり系免震:摩擦係数= 1/10(0.5/10〜)
のどちらかを採用しています(IAU免震は、固有周期型を採用していません)。
ここで、「すべり系免震」を採用する手もありました。 (「転がり系免震」は、風に弱いということがあります。それは、フラットな免震皿に転がり(ボール・ローラー)の場合です。IAU免震は、勾配を付けていますので、「すべり系免震」の免震性能の良いものとほぼ同等の強風に対する抵抗を持っています。)
しかし、「すべり系免震」では、すべり系・転がり系免震記載のように、免震性能が悪く、上部構造を「無損傷」に抑えるためには、耐震等級を上げないといけない場合もあります。
しかも、強風時の性能も、最大瞬間風速20m/sを超えてくると風で揺れる可能性が出てきます。 その最大瞬間風速20m/sの風もしばしば吹きます。
結局、「すべり系免震」の採用は、免震性能、強風対策も満足していない中途半端なものになるという事に、開発中に気づきました。 また、免震化費用も、鋼製架台が全体費用に占める割合が高く、免震装置費用の割合は半分程度、場合によっては半分以下ということもあり、そこで、免震装置費用をケチって、中途半端なものにする必要もない、ということになりました。
結局、「転がり系免震」を採用をして、「風揺れ固定装置」も同時に開発するということになりました。

風揺れ固定装置
風揺れ固定装置の解除ビデオ
左側の装置が風揺れ固定装置で地震開始早々にロックが 解除(固定ピンが下降)する様子がごらんいただけます。 その結果、
「転がり系免震」+「風揺れ固定装置※」+「ダンパー」
という形になり、「転がり系免震」では、このかたちが主流になりました。
そして、 「高い免震性能」+「高い耐風性能(強風に揺れない性能)」 が実現するということになりました。
しかし、いまだ「転がり系免震」で「風揺れ固定装置」をもたない製品があります。
「転がり系免震」+「ダンパー」 だけというものです。 「すべり系免震」でも風揺れ対策が大変にもかかわらず、その対処を怠っている。これは明らかに「欠陥」と言ってもよいでしょう。
ここで「風」について、整理しますと、
・風で揺れる「免震」 ・風で揺れない「免震」
があるということです。
「免震」には、風で揺れる「免震」が混じっているということです。
地震は、何十年かに一回大きなものが来ますが、台風は毎年襲来し、冬場の強風もしばしばです。
強風対策が不十分なものは、許されません。 「風揺れ固定装置」が開発され、 「風で揺れない免震」が当たり前になってくると(時間が経つに従い、それも相当に経ちますが)、
「風で揺れる免震」は、「欠陥」として許されなくなってきます(まだ許されている状態が不思議です)。 地震に強い「免震」が普及しても、その代わり、日本の建物が、風で弱くなる=「風で揺れる」などということは、許されなくなってくるということです。
※稀に「風揺れ固定装置」に電気式のものがありましたが、現在では大臣認定されません。 「風揺れ固定装置」の大臣認定要件は、次の3つです。
1.500年に一度の強風に耐えられる。 2.完全自動 3.電源を使用してはいけない。
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